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「悪いことは言わねえ、そいつ売って金にしろ・・・・・・」
何時もとは明らかに違うＮＧの言葉・・・・
「いらっしゃい」すら言わないＮＧにしてみたら、俺の前で話すこと事態が珍しい・・・・
俺の経験上、こんなことが重なる時っていうのは、何かが起きる前兆であったことが多い・・・
それは良い事であっても、悪い事であっても両方いえる事だがな・・・・
そんな、ＮＧに対して、俺も何時もとは違う言葉が出た。
「あんたを信じてみるぜ・・・・」
こんな言葉・・・言うことすら生まれて初めてだ。
どうかしているな。外は何時もと変わらず化け物共がうろついて
冷め切っているにも関わらず、ここの空気だけやけに暑苦しい・・・・
人間てのは感情があるもんだ・・・・改めて思い出した一瞬だった・・・
俺のその言葉を聞くとＮＧは深い溜め息のあと、「ふっ・・・」と鼻で笑い、俺の用意した物を持
って奥へと歩いて行った。
滅多にないこの光景が続き、驚きよりもいつの間にか心地よく感じている自分。
間違いなく何か起きると確信づいている自分。
「信じる」なんて言葉、いつ以来だろうな・・・・・
聞くのも言うのも久しぶりだ。
俺もまだ捨てたモンじゃねえ。人間らしさなんてとっくの昔に捨てたはずだったのにな。
そんなどうでもいいようなことを考えているうちに、作業の音が鳴り響く、
その音を聞くと何時も俺はタバコに火をつける。作業が終わる間に一箱。
喉が焼けるように痛くなった頃、ＮＧがもどって来る、その手には何かのネジが一つ・・・・・
ＮＧは失敗すると、何時も遺品のようにネジを１本持ち帰ってくる。
俺はその何の価値も無いネジを何本持っているだろうか数える気もねえが
嫌になるほどの数くらいがあることは確かだ。
これが何時もの俺とＮＧとの光景・・・・・
今日は何かが違うんだ、今日だけはこの光景とは、おさらばしたいもんだ・・・・
最後のタバコをすい終わった頃、やはりＮＧが戻ってきた。
その姿は、普段どおりの光景・・・・無表情のＮＧ、肩が下がり猫背になっているＮＧ
その手にはネジが１本・・・・・・・
大体の見当はつく、失敗しやがったな・・・・・・
いつに無く期待の渦に飲み込まれている自分に恥ずかしさと、嫌気がさした・・・・
「所詮俺の期待なんてこの程度の物だな・・・」
今まで俺の中に眠っていた心が全て目を覚ました気がした。
不思議とスッキリしたこの気持ちは何なんだ・・・・・
不思議な満足感、未知なる物へ走ったこの感じがたまらねえ・・・・・
ここでネジを手にして店を出るのが何時もの流れなんだ、
この日はネジを颯爽と取り、店を出ようとした・・・・なぜか足が軽いな。
「・・・このネジは何時も残るネジとは違うんだがな・・・・」
咄嗟のこの言葉に反射するかのように俺は振り返りＮＧを見た。
何か根拠の無い自信に満ち溢れた目をＮＧがしやがった・・・・
「やめろ・・・やめろ！！！！」これ以上期待させるような光景に出会いたくない自分が
間違いなくいる・・・・・
俺の中では久しぶりの爽快感を感じているが、それは心地良くても疲れているということだ。
今日はこれで満足だ・・・・・
その気持ちとは裏腹に、俺は店を出ることを止め
二箱目のタバコに火をつけた。
その俺の光景を目に、ＮＧはまた「ふっ」と鼻で笑い奥へと歩いて行った・・・・・
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