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第伍話 【白い髪の少年】[熱血江湖物語]  
詳細/おすすめ(3644/0) | ソーシャルブックマーク(0)  2013/05/13 23:32

この物語はフィクションであり、登場する人物・組織名・地名等、実際のゲームと同一の名称が登場する場合がありますが、一切関係はありません。

第伍話 【白い髪の少年】

 


前回のあらすじ


 玄勃派長の協力を得ることが出来た翔は、シャオリンの勧めで服を買うことに。

 その後、空腹を満たすため、宿屋の食堂で昼食を食べていた。


白い髪の少年  


 翔は目の前に置かれた『から揚げ』と対峙していた。

 食欲をそそるその香りと、肉汁溢れるその外観。そして口に入れた際の満足感。どれをとっても文句のつけようが無かった。その素材の名を聞くまでは……

 食べれば間違いなく美味いのだ。しかし、翔の頭の中をピョンピョン飛び跳ねながら、『あの生き物』が横切っていく……

 「ん? 食べないの? なら貰っちゃうわよぉ?♪」

 シャオリンがニヤニヤしながら、翔に言った。

 「……うぅぅ……」

 「ごちそうさまでした♪」

 「オパ♪」

 「……完食してしまった……味も満足。お腹も満腹。なのに何だろう……この敗北感は……」

 「はい。お粗末さまでした♪」

 翔は、リァンホンの笑顔が何故か異常に眩しく感じた。

 

 「なんだこれわぁぁぁ!!」

 壁際にいた三人組の男達が突然声を上げた。周りの客が何事かとその声の方を振り向く。翔たちもその声の方を振り向くと、若い仲居が頭を下げているのが目に入った。

 「何かしら? ちょっとごめんなさいね」

 そう言うとリァンホンは、その仲居の方に足早に向かった。

 「ここの店は、こんなものを客に出すのかぁ?」

 「も、申し訳ございません。すぐにお取り替えを……」

 「お客様、どうかされましたか?」

 「あ、女将さん……」

 リァンホンさんが話に割って入る。

 「どうもこうも無いわ! これを見ろ!!」

 そう言うと、男はリァンホンに徳利を突きつけた。リャンホンはその徳利を受け取ると、徳利の口に手をかざし、匂いを嗅いだ。

 「これは!? 申し訳ございません。すぐに新しい物をお持ち致しますので……」

 リァンホンはそう言うと、仲居に徳利を渡し、取り替えるように指示を出した。

 「あぁん? あぁもういいわ。飯が不味くなったわ。行くぞみんな」

 そう言うと三人組は立ち上がり、店の外へ出ようとした。

 「あ、ちょっとお代を!!」

 「なにぃ?」

 責任感からなのか、単に空気が読めていないだけなのか、仲居が三人を引き止める。

 「貴様! 客にそんなものを出しておきながら、金まで取ろうと言うのか?」

 三人は仲居さんの方を振り向き、食って掛かる。

 「いるのよねぇ……ああやって、難癖つけて代金踏み倒そうとする奴がさぁ……」

 事態を静観していたシャオリンが呟いた。

 「え? じゃあ……」

 「あの徳利、自分たちで仕込んだんでしょ。たぶん」

 翔は怒りを覚えた。

 「なんて奴らだ! 僕、リァンホンさんに言って来ます!!」

 立ち上がろうとする翔を、シャオリンが制止する。

 「あぁ、放っといていいわよ。リァンホンだって気付いてるだろうし」

 シャオリンはそう言うと、お茶をすすった。

 「おい聞いたか皆の衆! この店は客におかしな物を出しておきながら、金まで取るそうだぞ!!」

 店中に響く男の声。

 「お客様困ります。そんな大きな声を出されては、他のお客様のご迷惑になりますから……分かりました。お代は結構ですので、今日のところはこれでお引取りを……」

 そう言いながら、リァンホンさんは袖から何かを取り出し、三人に差し出そうとした。

 

 「ちょっと待ちな!! 女将さん、そんな奴らに構うこたねぇぜ」

 近くに座っていた白い髪の少年が声を上げた。

 「おぅおぅ! さっきから聞いてりゃ、グダグダ抜かしやがって!」

 「何だ貴様?」

 「その酒の分はともかく、自分たちが飲み食いした分くらい払って行くのが、礼儀ってもんだろーが!!」

 「なにぃ?」

 「よっ! あんちゃん、よく言った!!」

 客の一人が声を上げる。それと同時に、店のあちこちから三人に罵声が浴びせられた。場都が悪くなったのか、三人の顔が赤くなる。

 「貴様! 俺たちに説教するとはいい度胸だな!!」

 三人の内の一人が背中の刀を振りかざした。

 「お、お客様!?」

 驚くリャンホン。刀を見た他の客たちも、今までの罵声が嘘のように黙り込んでしまった。

 「おぉ? やろぅってぇのか? いいぜ、その喧嘩買ってやるぜ!!」

 そう言うと少年は、食卓に立て掛けてある布が巻かれた竿状の物に手を掛けた。 

 「ここじゃぁ皆に迷惑掛けちまう。表に出やがれ!」

 そして少年と三人の男達は、店の外に出て行った。

 「どうしましょう、シャオリンさん……早く止めないと……」

 翔はシャオリンに助けを求めた。

 「なんか面白くなってきたわねぇ♪」

 「お、面白いって……」

 「わたしたちも見に行くわよ♪」

 そう言ってシャオリンは、四人の後を追いかけて行った。

 「あ、ちょっと! シャオリンさ〜ん!!」

 翔とオパオパも、シャオリンを追って店の外に出た。


邪派の剣士 


 外に出ると、三人の男達と少年が対峙していた。

 さっきの刀の男の他は、剣と槍をそれぞれ手にしている。その四人を取り囲むように、少し離れて野次馬の人だかりが出来ていて、シャオリンは最前列に陣取り、腕組みをして少年の方を見ていた。リァンホンもその隣で、心配そうに様子を見ている。

 翔は人だかりを掻き分け、シャオリンの隣に立った。

 「大丈夫なんでしょうか……」

 「見てれば分かるわよ♪」

 翔の問いかけに対し、何故かニコニコしながらシャオリンはそう答えた。

 

 「小僧! 覚悟は出来ているだろうな!!」

 「あぁ、どっからでもかかって来な!!」

 少年は構えることも無く、整然と立ったままだ。

 「行くぞ!! でやあぁぁぁぁぁ!!」

 男達は、一斉に少年に襲い掛かった。

 「よっと♪」

 しかし、少年は刀の攻撃をすり抜け、

 「ほいっと♪」

 剣の攻撃を竿のような物で払い、

 「あらよっと♪」

 槍の男の頭に手をつき、飛び越えた。

 「どおした? それでお仕舞いか?」

 鼻の下を指でこすりながら、少年は男達を挑発する。

 「貴様ぁ! 馬鹿にしおってぇ!!」

 少年に虚仮にされたのがよっぽど悔しいのだろう、三人の目が血走っていた。

 「これでもくらえぇ!! 煉獄刀法! 黒砂滅渦!!」

 「叫喚槍法! 紫龍襲槍!!」

 「旋瓦破剣! 激風殺武!!」

 男達の武器から閃光が走り、光の斬撃が少年を襲った。凄まじい爆風が巻き起こり、土煙が舞い上がった。

 「うわぁっ」

 翔は思わず目を瞑った。

 「どうだ参ったか!! ……ん!?」

 その時だった。土煙の中から少年が飛び出し、頭上高く飛び上がった。 

 「今度はこっちから行くぜ!!」

 そう言うと、少年は竿状のものの布を空中で投げ捨てた。中からは、丸い太刀打ちを持ち、雲の様な形をした槍が姿を現した。

 「刺伝槍式! 雷震槍法!!」

 少年は槍を大きく振りかぶり、男達に目掛け叩き付けた。

 「うわぁぁぁぁぁーーー」

 槍から放たれた斬撃は地面に突き刺さり、爆煙と共に男達の体を吹き飛ばした。

 「へんっ! どんなもんだい♪」

 地面に降り立った少年は槍を肩に担ぎ、鼻の下をこすりながら、そう言った。

 「す、すごい……」

 翔は、始めて見る戦いに興奮していた。

 「へぇ〜。結構やるじゃないあの子」

 シャオリンは少年が勝つ事が初めから分かっていた様だが、その予想以上の強さに感心していた。

 「お、おのぉれぇ……」

 少年の斬撃に吹き飛ばされた三人が、再び立ち上がろうとしている。

 「お、まだやろうってぇのか?」

 少年はそう言うと、槍を構えた。

 

 「お前達何をしている!!」

 人だかりの奥から男性の声がした。

 その声に人だかりが掃け、剣を腰に刺し黒い服を着た男性と、紫の服に青い氷のような飾りの杖を持った女性が入って来た。

 「お、お頭様!?」

 三人の男達は少し怯えるように、その男性を呼んだ。

 「ん? なんだぁ?」

 『お頭様』と呼ばれたその男性は、男達の脇を通りながら、横目で三人を睨みつけ、少年の前に足を運んだ。

 「お前がやったのか?」

 「あぁ、そうさ。あんたが親分か?」

 男性は、もう一度三人の男達に目をやると、少年の方を再び向いた。

 「何があったか知らぬが、門徒が傷つけられて、黙っている訳にも行くまい……」

 「へんっ! 上等じゃねぇか……」

 少年は唇を一舐めすると、男性に向かって槍を構えた。

 「あの子……やられるわよ」

 「え?」

 さっきまで少年に感心していたシャオリンが、一転真剣な表情でそう呟いた。


【次回予告】


 白い髪の少年の前に現れた邪派の剣士。その姿を見たシャオリンさんは、少年が負けると断言する。

 次回 第陸話 【覇王級】

シャオリンさんって一体・・・

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