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第拾話 【薪を取り戻せ!】[熱血江湖物語]  
詳細/おすすめ(3786/0) | ソーシャルブックマーク(0)  2013/05/25 02:05

この物語はフィクションであり、登場する人物・組織名・地名等、実際のゲームと同一の名称が登場する場合がありますが、一切関係はありません。

第拾話 【薪を取り戻せ!】

 


前回までのあらすじ


 神社の石段から転がり落ちたはずの翔は、気が付くとこの『江湖』の世界にいた。

 そこで出会った人々の協力を得、玄勃派で暮らし始める翔。

 武術の修行を開始した翔だが、修行の成果が徐々に現れ始めていた。


街の悩み事


――――玄勃派 鍛冶屋――――

 「こんにちは〜ダオジャンさん」

 「おぅ! カケルじゃねぇか。今日は何の用だ?」

 「強化石の買取りお願いしたいんですけど」

 「おぅ、そうか。済まねぇが、ちょっと待っててもらえねぇか? いま手が放せねぇんだ」

 「いいですよ、急いでませんから」

 「お、そうだ。待ってるついでと言っちゃ何だが、リァンホンのところに行って薪を貰ってきてくんねぇかなぁ?」

 「いいですけど、薪ならフェイウェンさんのところに無いんですか?」

 「あいつのとこだと、何かと面倒だろ?」

 「……確かに……。じゃぁ、ちょっと貰ってきますね」

 「おぅ! わりぃな、頼んだぜ!」

 翔は鍛冶屋を出て、宿屋に向かった。

 

 宿屋に着くと、リァンホンが笑顔で出迎えた。

 「こんにちは、リァンホンさん」

 「あら、カケルさん。いらっしゃい♪ お一人ですか?」

 「あ、いえ、ダオジャンさんが薪を少し分けて欲しいって言ってるんですけど……」

 「あら、また? これで何度目かしら……ちゃんと後で請求しなきゃね♪」

 そう言いながらも、何故か笑顔のリァンホン。

 「あ、でも……大丈夫かしら……」

 「どうかしたんですか?」

 「あ、いえ。分けてあげるのは構わないんだけど……ちょっとね。見てもらえば分かると思うけど……」

 リァンホンはそう言うと、薪をいくつか手に取り翔に見せた。

 「この薪どう思います?」

 「湿気ってますねぇ……っと言うか、生乾きみたいな……それに太さも長さもバラバラだし……」

 「そうなんですよ。最近こんな薪しか売ってなくて……火の点きも悪いし、点いたら点いたですぐ消えちゃうし、しかも薪の値段も高くなってて、みんな困ってるんですよね……」

 「大変ですねぇ……でも、どうして急に薪の質が落ちたんでしょう?」

 「さぁ……フェイウェンさんなら、何か知っているかもしれませんけど……」

 「そうですね。後でちょっと寄ってみます」

 翔は薪をダオジャンに届けると、フェイウェンのところに向かった。

 

 「ん? 薪の質? おぉ! それよそれ! それで俺も困ってんだよ」

 「そうなんですか?」

 「俺も業者に、もっと良い薪を入れてくれって頼んでるんだがよ、こんな薪しか寄こしてこねぇんだよ」

 薪を手に愚痴をこぼすフェイウェン。

 「リァンホンやダオジャンは、仕事柄薪が大量に必要だからなぁ。多少高くて質が悪くても渋々買っちゃくれるんだが、一般の客の出が悪くてなぁ……本当にどうにかして欲しいぜ」

 そう言うとフェイウェンは、薪を放り投げた。

 

―――― 夕方 ――――

 翔は夕飯を食べながら、街で聞いた事をシャオリンに話していた。

 「ふ〜ん。そんな事になってるのね」

 オパオパは翔の隣に座って、相変わらず何かカリカリかじっている。

 「そう言えばこの前、木こりのおっちゃんが仕事辞めさせられたって、ぼやいてたわねぇ……」

 「辞めさせられた?」

 「なんでも伐採場の棟梁が変わったらしくてさぁ、意見したら、いきなり解雇されたらしいのよ。他にも嫌がらせされて、自分から辞めちゃったりする人もいるみたいよ」

 「それは酷いですねぇ……」

 「まぁ、意見の食い違いって奴だから、良くある話じゃあるんだけどね」

 シャオリンの話を聞き、翔は考え込んだ。

 「どうかしたオパ?」

 オパオパが翔の顔を覗きこむ。

 「ああ、木こりの人達が解雇されてるのと、薪の質が悪くなったのって何か関係あるのかなぁって思って……」

 その様子にシャオリンが釘を刺した。

 「カケル……あんた、あんまり変なことに首突っ込むんじゃないわよ?」

 「え、ええ……」

 一応そう返事をしたものの、気になる翔であった。


悪徳木こり


 次の日、翔はシャオリンの話がどうも気になり、伐採場の様子を見に向かっていた。

 「良いオパか? ご主人様に黙って来ても……」

 「様子を見るだけだから大丈夫だよ」

 一人で見に行くつもりだった翔だが、家を出る姿をオパオパが見つけ、付いて来ていた。

 「変なことに首を突っ込むなって、言われてなかったオパか?」

 「大丈夫だって」

 翔はオパオパの忠告も気にせず、伐採場を目指した。

 

 伐採場に着くと、辺りは閑散とし静まり返っていた。

 「人がいないなぁ……」

 「誰もいないオパねぇ……」

 まだ昼過ぎだし、仕事終わりとも思えない。

 「よし、あっちに行ってみよう」

 「あ、待つオパ」

 翔たちは人を探すため、奥に進んだ。すると、伐採場には似つかわしくない窓に鉄柵が付いた小屋が見えた。

 「何だろう? あの小屋」

 翔は窓からその小屋の中を覗いた。そこには藁がうず高く積んであった。

 「何でこんなところに藁が?」

 「カケル、こっち開いてるオパ」

 オパオパの方に行くと、小屋の扉が少し開いていた。翔たちは小屋の中に入った。

 藁の山に近付くと、藁の間から中に何かが積まれているのが見えた。

 「これって薪じゃないか。しかも、良質の薪ばっかりこんな沢山……」

 その時、小屋の外で声がした。

 「誰か来たオパ!」

 翔たちは、慌てて身を潜めた。藁の影で様子を窺っていると、木こり逹が薪を担いで入って来た。

 「よいしょっと。しかし、棟梁もいいこと考えやがったなぁ。質の悪い薪ばかり流して、薪の卸値釣り上げるなんてな」

 「あぁ。で、上がった所で良質の薪流しゃ、ガッポリ儲かるって寸法だ。へへへ」

 木こりは翔たちがいる事には気付かず、そのまま話を続ける。

 「でもアイツらもバカだよなぁ。言う事聞いてりゃ、タンマリ儲けられたのによ」

 「あぁ。『そんな薪流したら信用がなくなっちまう』なんて、ほざいてなぁ……」

 「おかげでアイツらの分の仕事まで回されて、いい迷惑だぜ。ま、金になるからいいがな。へへへ」

 木こり達はそう話しながら、薪の束を藁に隠した。

 「そうか、そう言う事だったのか……」

 翔たちは木こりに気付かれないように奥に移動しようとした。

 「ん!? だれだ! そこに居るのは!?」

 「まずい、見つかった!」

 「なんだお前達! そこで何してやがる! 俺達の話聞いてやがったな!!」

 「逃げるオパ!!」

 翔たちは木こり達の間を走りぬけ、小屋の外に逃げ出した。

 「待ちやがれ!!」

 木こり達も直ぐに後を追って、外に出て来た。

 「皆! 来てくれ! 侵入者だ!!」

 その声にどこに居たのか分からないが、他の木こり達が集まって来た。

 「囲まれたオパ……」

 「ど、どうする……」

 「こうなったら戦うオパ!」

 「仕方ないな……」

 人を傷つけるのは抵抗があったが、翔は仕方なく剣を抜き構えた。

 「ほぅ、やろってぇのか? みんな! やっちまえ!!」

 木こり達が襲い掛かって来る。

 「行くオパ!」

 オパオパは飛び蹴りや体当たりで、木こり達を蹴散らしていく。

 「やるなぁオパオパ。僕も!」

 翔とオパオパは木こり達の攻撃をかわし、手傷を負わせていった。

 「調子に乗りやがって! 一斉に掛かれ!!」

 今までバラバラに襲って来ていた木こり達が、一斉に飛び掛ってきた。多勢に無勢。一斉に来られては抵抗も虚しく、木こり達に捕まってしまった。

 「くそっ……」

 「は、放すオパぁーーー!!」

 「手間掛けさせやがって。おい! 棟梁のところに連れて行け!」

 翔たちは縄で縛られ、棟梁の下に連れて行かれた。

 

 一方その頃、カケルとオパオパの姿が見えない事に気付いたシャオリンは、心当たりを探していた。

 「あら、シャオリンさんいらっしゃい♪ 今日はお一人ですか?」

 「ねぇリァンホン、カケル見なかった?」

 「カケルさんですか? 今日は見えられてませんけど……どうかしたんですか?」

 「昼前から姿が見えないのよねぇ……オパオパもいないし……」

 「行き先を告げずに出歩くなんて、カケルさんにしては珍しいですねぇ……それはそうと……♪」

 シャオリンの様子を見て、微笑むリァンホン。

 「何よ、ニヤニヤして……」

 「カケルさんを心配しているシャオリンさん、まるで『お母さん』見たいですよ♪」

 リァンホンの言葉に顔が赤くなるシャオリン。

 「お、お母さん……って、し、失礼しちゃうわね。そこは『お姉さん』と言ってもらいたいわ」

 「ハイハイ♪ でも、男の子なんですから、たまにはいいじゃないですか?」

 「それはそうだけど……まったく、どこで何してるんだか……」


大刀殺爪!


 木こりに捕まった翔たちは、伐採場の一角にある作業小屋に連れて来られた。

 小屋の中には奥に机があり、上半身裸の大男が座っていた。どうやらあれが棟梁らしい。

 「ん? 侵入者だぁ?」

 「へい。どうも薪の件を聞かれちまったようで……棟梁どうしやす? こいつら」

 「ここで見聞きしたことを誰にも言わねぇってんなら、返してやってもいいが、どうする? 坊主」

 「本当オパか!?」

 「信じちゃダメだよオパオパ。嘘に決まってる」

 翔は棟梁の顔を睨みつけた。

 「なら、仕方がねぇな。おい! こいつらを薪小屋に閉じ込めとけ!」

 「悪く思うなよ坊主。聞いちまったお前たちが悪いんだからよ」

 「くっ……」

 翔たちが連れて行かれそうになったその時、小屋の外で音がした。

 「なんだお前!? ぐあぁぁぁ!」

 「なんだぁ?」

 小屋の扉がゆっくり開き、人影が現れた。

 「シャオリンさん!」

 「ご主人様ぁ〜!」

 「もしやと思って来てみれば……あんた達何やってんのよ……」

 「す、すみません……」

 「だから余計なことに首突っ込むなって言ったでしょうが……で? あんたが黒幕ってわけ?」

 シャオリンが棟梁の方に顔を向けた。

 「ん? 何だてめぇは?」

 「お前、どうやって入ってきた! 外の奴らはどうした!」

 「あぁ、疲れてるみたいで、みんなぐっすり寝てるわよ♪」

 どうやら外に居た連中は、みんなシャオリンが片付けてしまった様だ。

 「な、なに!? と、棟梁〜!?」

 シャオリンの言葉に慌てる木こりだったが、棟梁は慌てる様子も無い。

 「ふん。威勢がいい女だな。俺も威勢のいい女は嫌いじゃないぜ」

 「あら、ありがと。でもわたし、あんたみたいなゴリゴリのモヒカン男に興味ないのよねぇ」

 「お、お前! 棟梁になんて事を……」

 棟梁は立ち上がると、シャオリンに近寄って来た。

 「言わせておけば、あまり図に乗るんじゃねぇぞ……」

 そう言い終わる前に、シャオリンが突き出した拳が棟梁の顔にめり込んだ。

 「ぐはっ……」

 「と、棟梁!?」

 「あら、あまりに気持ち悪かったから、つい手が出ちゃったわ。御免あそばせ♪ オホホホホ」

 棟梁の迫力に全く動じていないシャオリン。小馬鹿にされて余ほど頭に来たのだろう、棟梁が真っ赤な顔で起き上がって来た。

 「ぬうぅぅぅぅぅ……もぅ勘弁ならねぇ!!」

 そう言って、机の後ろから何やら大きなものを取り出した。

 「ブロロロロォォォォォォ!!」

 けたたましい音が小屋の中に響いた。

 「な、何よそれ!?」

 「チェ、チェーンソー!?」

 何でそんなものがこの世界にあるのか分からないが、それは紛れも無くチェーンソーそのものだった。

 「コイツは一昨日、よろず屋で見つけた代物だ。ちょっとでも触れりゃ、掠り傷じゃぁすまねぇぞ!!」

 「ブロロロロォォォォォォ!!」

 唸りを上げるチェーンソー。

 棟梁はチェーンソーを振り回し、シャオリンに襲い掛かった。

 「ちょっと、ちょっと! そんなもん小屋の中で振り回したら、危ないでしょうが!!」

 襲い掛かるチェーンソーを小屋の中を跳び回り、かわすシャオリン。その度に床や壁がチェーンソーによって砕かれて行く。

 「と、棟梁! こ、小屋が崩れちまいますよ!」

 「しゃらくせえ! 知ったことか!!」

 砕かれた破片が翔たちの方にも飛んでくる。

 「オパオパ、この縄を早く解いて! シャオリンさんに加勢しないと!」

 「待ってるオパ。いま噛み切るオパ!」

 翔の体を縛っている縄を噛み切り始めるオパオパ。

 「ちょろちょろと動き回りやがって! じっとしやがれ!!」

 「当たり前でしょ! そんなのに当たったら怪我するじゃない!!」

 その間にも小屋は見る見る破壊されて行く。

 「切れたオパ!」

 「よし!」

 翔が加勢しようと立ち上がろうとしたその時、チェーンソーに砕かれた柱の破片が、シャオリンの頬を掠めた。

 「うっ……」

 するとどうしたのか、シャオリンの動きがピタリと止まった。

 「へへ。ようやく観念したか?」

 その様子を見ていたオパオパが急に騒ぎ出した。

 「カケル!! 早く逃げるオパ!!」

 「え? でもシャオリンさんが……」

 「いいから早く逃げるオパ!! 逃げないと、ボクたちも巻き込まれるオパ!!」

 「え? 巻き込まれるって?」

 オパオパは何故か相当焦っている。

 「……ぁぁ……・」

 「ん? てめぇ何ブツブツ言ってやがる」

 シャオリンが、うつむいたまま何か呟いている様だ。

 「……アー……アタマニキタ……」

 「はぁ?」

 「……ヨクモ……ワタシノカオニ……キズヲ……」

 次の瞬間、シャオリンの体から赤い煙のような物が立ち昇った。

 「なんだ?」

 シャオリンは腰から護身用の小刀を取り出すと、左脇に構えた。

 「あわわわわ……もう間に合わないオパ……」

 「え? えぇ?」

 オパオパは何かに脅え、ブルブルと震えだす。

 「地流刀法……大刀殺爪ーーーーー!!」

 シャオリンの刀から放たれた凄まじい閃光と斬撃が、棟梁の体を包み込んだ。

 「ぎゃぁぁぁぁぁぁーーーーー」

 そしてその斬圧は周りにいた翔たちをも巻き込み、小屋全体を包み込んだ。

 「うわぁぁぁぁーーーーー」

 「オパぁぁぁぁーーーーー」

 閃光と爆炎によって、小屋は見る影もなく吹き飛び、一面瓦礫と化した伐採場は、静けさを取り戻していった。

 「ぷはっ! た、助かった……オパオパは!?」

 「ぷはっ! あぁ……死ぬかと思ったオパ……」

 「よかった……オパオパも無事か」

 翔たちは瓦礫の中から何とか這い出した。

 「そう言えばシャオリンさんは?」

 そこに小屋があったであろう場所を振り向くと、シャオリンがうつむいたまま立っていた。その傍には、斬撃でボロボロになった棟梁と木こりが倒れている。

 「シャ、シャオリンさん?……」

 翔の声にシャオリンが振り向いた。

 「ひぃ!」

 しかし振り向いたシャオリンの目は殺気を放ち、今にも飛び掛ってきそうな表情であった。

 『このままではやられる』と翔が思った次の瞬間、シャオリンの表情が一変した。

 「あ〜ん! 頬っぺに傷が付いっちゃったぁ〜!! この傷、跡が残ったらどうしよ〜」

 「シャ、シャオリンさん……」

 あまりの変わり様にあっけに取られる翔。

 「そんなの、ツバ付けときゃ治るオパ……」

 辺りは日も傾き、夕焼けが空を赤く染めていた。


【次回予告】


お使いから戻ると、オパオパが苦しそうに倒れていた。

オパオパどうしたんだ!? シャオリンさんはいないし、どうしよう……

次回 第拾壱話 【シャオシャン】

 ところで……この散乱してる木の実はなに?

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